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ハードワークのために暮らしが疎かに
「7年ほど前、ウェブの制作会社でプロデューサーをしていたころのことです。ウェブ業界は長時間労働が当り前。終電で帰宅という毎日でしたから、おいしいものも料理も好きな私は便利なお取り寄せを頻繁に利用していました」
そんなある日、雑誌をめくる花房さんの手を止めたのが愛知の八丁味噌。おいしそうだからと、さっそくお取り寄せ。
「その味噌メーカーに聞きたいことがあって電話をしたとき、窓口の人にいわれたんです。ダシは濃いめにとってくださいねって」
当時、すでに結婚していた花房さん。料理好きでも、あまりの忙しさについダシ入りの味噌に手がのびてしまうような主婦だったという。しかし、取り寄せた味噌については、いわれたとおりカツオ節と昆布でしっかりダシをとり、味噌汁を作ってみたところ。
「その味は実に驚くものでした。具と味噌が渾然一体となって、奥深い滋味があって。たった一杯のお椀なのに、まるで深遠で大きな宇宙があるようでした。そして、今まで自分のどこかに溜まっていた透明な澱のような疲れが、す〜っと溶けていったんですね。その瞬間、思いました。私の毎日に足りなかったのはこれだ、と」
手間をかけた味噌汁が教えてくれた
大切なこと
やりがいのある仕事を愛してはいたけれど、当時の生活に「なにか満たされないもの」を感じていたという。
「その答えが、そのお椀の中にあったのです。忙しいからと、暮らすための手間ひまを惜しんだり、時間をお金で買ったり。私は、もうそれがいやなのだとわかりました。それをきっかけに、これからは毎朝の味噌汁のために、ダシをきちんととる暮らしをしようと心に決めたのです」
以来、電気炊飯器を処分して羽釜でご飯を炊くようになり、今では玄米食が基本に。さらに、糠床をかき回し、季節ごとに旬の食材で保存食を作り、味噌まで作るようになったのだとか。
「仕事についても、好きだった会社を退職し、フリーランスを選びました。自分が納得できる暮らしをするための時間が、なによりも欲しかったから」
花房さんが出会ったのは、単なるお取り寄せの味噌ではなく、人生を変えるほどの意味ある味噌。
「お取り寄せというと、ようするにグルメでしょ?と思われがちですが、良き生産者が心をこめて作った一品に出会うと、人生にとってとても大切なことを教えてくれることもある。そういうパワーがあるんですね。私はそれを身をもって体験しました」
その後、縁あって「おとりよせネット」の立ち上げに参加し、お取り寄せコーディネーターに。
「日々の暮らしを美しく、楽しく、おいしく、豊かに変えてくれる一品をご紹介しています。たった一人の方でも、私のような出会いがあるといいなと思いながら」
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