進化する!一般事務職
【 2004年12月 】
【 Case2 】
新潟ファイナンシャルプランニング 経理環境改善コンサルタント 田村夕美子

一般職こそ、利益やキャッシュを生み出す仕事をしなきゃ!
〜 あなた独自の風を巻き起こして、会社にも自分にも付加価値アップを 〜

 あなたは、日頃こんな3人のような心で仕事をしていませんか?何か1つでも当てはまることはないでしょうか・・・

  • A子さん・・・うちの会社は男社会。私は女性だから何年キャリアを積んでも責任ある仕事など任せてもらえないわ。
     
  • B子さん・・・私は低学歴だから昇進などムリ。必死になってやっても認められないからばかばかしいわ。
     
  • C子さん・・・仕事があるだけで私はしあわせ。社外の友達はリストラされた子もいるけど、うちの会社は黒字だからまず、身分は安泰よ。

確かにA子さんのご意見の通り、まだまだビジネスの世界は男性社会であることは事実でしょう。B子さんの理由も悲しいかな大きな壁かもしれません。C子さんは、社内では戦力とはなっていなくて「会社の扶養(不要)家族」的存在かもしれませんね。

この3人に同感できるそんなあなたに、また質問です。
あなたは過去に本気になって会社や自分のために、仕事をしたことがあるでしょうか?

もし答えが「ノー」なら、まずはやってみませんか?「イエス」の人の中で成功出来なかった人は、もう一度だけやってみませんか?諦めないで・・・

さて、今回は那津子(なつこ)さんがあなたにステキな「ビジネスヒント」をプレゼントしてくれるかもしれません。

 

第二回 庶務部 那津子さんの場合
○今までの仕事

 会社に届く様々な郵便物、宅配物を各部署ごとに振り分けて配布すると同時に、会社から発信する郵便類を取りまとめてポストへ投函もする、いわゆるメールサービス。
他は社内各部門より送られてくる物品請求書に従い、事務用品や来客用お茶、洗剤などの物品を倉庫から払い出し、調達する。備品倉庫の中の在庫が少なくなれば上司の承認を得て、発注業務も行う。これが、那津子さんの主要業務だ。
残念ながら難易度が高い仕事とはいえず、また高卒ということもあり、今の会社では昇進や自分の能力を生かした仕事を任せられることは難しいと感じている
              
○ 那津子(なつこ)さんの「新風」・・・
“取引先の現場信用調査”、“昔ながらの付き合いは、ご法度!”を唱える。

 那津子さんは、「ウーマン商事」を1年後に退職する決意をする。もっと自分の能力を生かせる企業へ転職するためだ。ただ、このまま何の進歩もなく退職しては当然転職先も見つからない。そこで、今勤務している会社に置き土産代わりに貢献をしようと決心する。毎日配達される膨大な数の郵便物・・・送り主である企業は、どの方面で自社に関わっているのだろう?このまま取引を続けても良い企業なのだろうか?こんな疑問から、那津子さんは独自の調査を開始することにした。封筒の表書きに「見積書在中」「納品・請求書在中」と記載があるものは、「当社の仕入先」だと判断出来る。だいたいいつも同じ業者からのものだ。さて顧客は?那津子さんは当社から発信される郵便類のポスト投函もしているので、封筒の表書きに「見積書在中」「納品・請求書在中」とあるものは逆に「当社の顧客」と判断出来た。それらの企業名をメモに取り、それぞれ「顧客」と「仕入先」に分類した。まずは顧客から調査を開始した。那津子さんは顧客である企業の経営安全度がどうなのかをまず調べようと思ったのである。必要な資料は、もちろん「決算書」!

 那津子さんは以前より決算書の読み方を勉強していたので、その知識を活かしてまずは数字面からの調査をしようと思ったのである。今は上場企業のみならず、多くの中小企業がインターネットのホームページ上で決算書を公開しているので、入手が容易に出来る。

 ホームページから入手出来ない企業は、図書館へ出向き資料を集めた。

 またこれだけに止まらず、那津子さんは直属の上司を通して営業部へ打診し、いつも営業部から郵送していた納品、請求書類の中で会社から近隣にある企業については那津子さんが直接先方へデリバリーしたい意向を伝えた。表向きの理由は「通信費削減」のためと謳ったが本当の目的は、会社の将来と安全のために奥深い「信用調査」をしたかったためである。那津子さんの熱意が伝わり、上司の協力も得てめでたく実現できた。

 納品・請求書を渡すことを口実に得意先の担当部署へ赴き、従業員の応対や事務所の雰囲気までチェックしたのである。こうして得意先企業の経営安全度を様々な観点から判定し、独自の資料をまとめ上げた。

 努力の甲斐あり、那津子さんの資料は晴れて部外でも認められることとなった。特に営業部や審査部は、以前より得意先の与信管理は行っていたものの、リサーチ会社にアウトソーシングしていた為、定期的に淡々とした書類が送られてくるだけだった。現場まで出向いて情報収集した那津子さんの資料はわかりやすく、今後の与信管理の方法を改める機会を作ったのだ。つぎは仕入先。那津子さんが日頃から係わっている物品や発注方法を洗い出した。

 購入先は従前の庶務担当者より引き継いだだけで、何ら新規開拓をしてこなかった。そこで、現在使用している物品を洗い出し、その物品の納入業者のライバル数社より見積りを依頼した。業者によっては品質の善し悪し、価格とも高低があったが、業者同士の競争原理を働かせることにより、良い条件のもとで従来の業者とも、引き続き取引をしていくことになった。

○ 那津子さんが、会社に与えた利益。

 いままで、あまり重要視されていなかった顧客の与信管理を再度見直すことになった。売掛金の回収を徹底し、要注意な顧客からは早期回収を図るなど、会社の債権をより慎重に扱うようになる。会社の利益の他、債権管理の重要性を再認識させた。また仕入先についても「昔ながらの付き合い」は、完全撤廃はムリだが、消耗品ほか会社の主要仕入れとなる原材料も、商品や経営状態 、また仕入条件の良い業者に新規参入を開放することになった。その一年後、「ウーマン商事」の決算書は・・・

  • 消耗品費(損益計算書の中の費用) ・・・減→ 利益アップ。
  • 売上総利益(損益計算書内上段)  ・・・増→ 利益アップ。
  • 売掛金、受取手形(貸借対照表内の流動資産)の中の貸し倒れ予備軍(不良債権になりつつあるもの)             ・・・減→ めでたく回収され、現金化に。

○ その後の那津子さん

 「ウーマン商事」を惜しまれながら退職。会社に残した貢献度は、晴れて履歴書に添える「職務経歴書」に堂々と記入することが出来、最適のアピール材料となった。お陰で内定を複数の会社からもらったがなんと「ウーマン商事」の庶務部時代の直属上司よりカムバックしてくれないかと懇願される。

「納品・請求書デリバリー」の提案の際、他部門へのパイプ役になってくれた上司。
義理人情のためではないが、話だけ聞いてみることに・・・

 上司から渡された人事部発信の白い紙に書かれた「新企画室組織図」そのトップにはなんと那津子さんの名前が! 会社のもしもの時に必須な「リスクマネジメント」を本格的に起動させようと那津子さんの上司が発案し、その企画室のトップに那津子さんを立たせようと思ったのである。つまり・・・庶務部当時の上司が 那津子さんの功績を高く評価し、人事部にかけあってくれた結果、めでたく那津子さんは「新リスクマネジメント企画室」の室長へと昇進したのである。

 

解説―那津子さんが巻き起こした風とは…

● 取引先は、今後も「パートナー」としてふさわしいのか?

 郵便物デリバリーや消耗品発注など、この「作業」自体、難易度は高くありません。重い責任もないでしょう。しかし、「郵便物」の送り主である企業や毎回発注している消耗品の納入業者などは、何年も会社に関わりのある「パートナー」に違いありません。このパートナーと今後もお付き合いしていくべきかどうか、那津子さんは以前から勉強していた「決算書」や「貸借対照表」の見方のスキルのおかげで、疑問と興味が芽生えました。それが引き金となって独自の調査に乗り出したのです。

● やりたい仕事は、思い切って公表しよう!

 那津子さんは、自分がやりたい「信用調査」の仕事は、会社のためになる仕事だと上司を説得し、部署外の営業部とも連携をとり実現しました。あなたも「こうしたい!」と思う仕事を見つけたら心の中で悶々とせず、それを公にして、直属上司や頼りになる先輩らに協力してもらいましょう。

 一般職だから・・・女性だから・・・など遠慮せずに、あなたが主体となって行動するのです。最初はあなた1人が吹かせた微風でも、力のある人の協力により大きな風が巻き起こります。いつも何気なくこなしている定型業務の中にも、必ず会社の利益のためになるヒントが隠れているはず。それを見つけたら、あなたの成功も近いはずです。

 



簡単!決算書の見方。

 今回は「貸借対照表」です。下段に簡単な説明もあるのでご覧下さい。
さて、あなたは会社の建物や普段使用しているオフィス機器、工場内にある機械類等がどのように調達されたか解りますか?これらの主な建物・機械機器類は「固定資産」と呼ばれます。自己資金で購入しているのでしょうか?それとも借金して購入しているのかな?ムリはないのかな・・・

 こんな疑問からはじめてみると、この表の見方も楽しくなるかもしれません。
また、たくさん利益が計上されても「現金化」がされないと大変です!

 たとえば「売上」が損益計算書上で計上されていても顧客が、「約束の期日まで、代金が払えない。期日を延ばしてくれ〜」と言われそれに応じていれば、いつまでも貸借対照表上では、「売掛金」か「受取手形」のままで「現金」には化けません。よく世間でいわれる不良債権の始まりです。那津子さんはここに着目しました。「ちゃんと代金を払ってくれる顧客」なのかを調べようと思ったのです。

 また、売れる見込みの無い商品や材料などのデッドストックも立派な資産。

 つまり、貸借対照表上でおすましして「わたし資産よ」なんて顔をしていても疑ってかかることも大切です。「現金」がないと死活問題!給料日に現金がなく、「代わりに当社の商品を支給するよ」なんて社長から言われてもいやですよね。

 貸借対照表の見方は、この資産、負債は「いつ現金に化けるのか?」がポイントといっても過言ではありません。

 決算書の見方は、どこも共通です。あなたの会社のものだけでなく那津子さんのように「取引先」もチェックできると1歩も2歩も前進ですね (損益計算書の見方は、第1回目参照)。

 

◆ これが貸借対照表(Balance Sheet)

・会社の財務状況を示す成績表だよ。

(↑クリックで拡大画像が表示されます。)

 

田村夕美子さんのプロフィール

 新潟ファイナンシャルプランニング 経理環境改善コンサルタント。建設業、エステ業、化粧品販売、フードビジネス等20年に渡り幅広い業種の経理を担当。一担当者から総括、管理職など様々な立場を経験。
 近年では、医療法人にてサラリー経理ウーマンとして働く傍ら、夫が立ち上げたファイナンシャルプランニング事務所の経営プランニング担当として活動中。又、経理情報雑誌に誌上講座も執筆している。
 “現場に強い!利益とキャッシュと幸せを生む経理”をモットーに自らを「経理環境改善コンサルタント」と命名し、中小企業の経理担当者のマインドを高める使者を目指す。

●新潟ファイナンシャルプランニング ・・・ http://nfp.cc

 

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