進化する!一般事務職
【 2005年1月 】
【 Case3 】
新潟ファイナンシャルプランニング 経理環境改善コンサルタント 田村夕美子

一般職こそ、利益やキャッシュを生み出す仕事をしなきゃ!
〜 あなた独自の風を巻き起こして、会社にも自分にも付加価値アップを 〜

―終業時刻はとっくに終わっているのに、まだパソコンのキーを叩く音がオフィスに響く・・・時計はPM10:20 「あと一時間くらいしたら切り上げようかな〜」

どこの会社でも見受けられるこの状態を想像してみてください。あなたはどんな風に感じますか?

 A … この人はきっとガンバリ屋さんだね。ボーナスも期待していいよ。
 B … もっと要領よくやろうよ。仕事は手際よく片付けてアフター5を満喫しよう!
 C … この人が今やっているその仕事は、将来、会社の未来に役立つの?

 どの意見も、もっともな気がします。でも「A」を選んだあなた。かつ「付き合い残業をしている社員が高い評価を得ている感じがする。」こんな社風の職場にいるあなた。
今回の阿綺子さんの“新風”を参考にされては如何でしょう?
ヒントが隠されているかもしれません…

 

第三回 人事部 阿綺子(あきこ)さんの場合
○今までの仕事

 給与計算が主な仕事。タイムカードのチェックから、残業手当の計算、勤怠のチェック、後はひたすら給与ソフトに入力する。給与は社員の要。入力ミスは許されないが上司によるダブルチェックにより、多大な緊張感はない。ただ、社員が多いので、ミスが無い様にいくつかチェック用にメモを取りながらの作業。毎月、給与の計算のみでいっぱいの仕事量。こんな単調な日々がこれから何年も続くのかと思うと心はブルーになる。大体この様な典型的ルーティン作業は、今後どんどんアウトソーシング化されると思うので、将来が不安。なんとかしなくちゃ!と自然に拳を握る日々。

              
○ 阿綺子さんの「新風」・・・
“「タイムマネジメントコンクール」提案”

 阿綺子さんは、毎月の残業手当の内容に着目した。スキルアップしようと人事関係の書籍を読むようになったが、最近よく聞かれる「成果主義賃金」が一体なにを基準に成果を挙げたといえるのか自社の場合を考えるとよく解らなかった。「時間外労働=定時間内に業務を終えることの出来ない無能な人間」と切り捨てれば、必ず反感を持つ人はいるだろう。でも申し訳ないがその人は、時間外労働をしてまでも、最終的に会社に何か貢献できたことはあるのだろうか?と残業のデータ入力の度に思うようになった。

 自社の成果主義とは・・・自問自答すると、最終的に会社に利益をもたらした仕事をしたかを成果として位置づけるのでは?と感じるようになる。営業や企画部門は数字を達成すればそれが、物差しとなりやすいがそれ以外の管理部門は、上司とそりが会う人や、時間外も黙々デスクに向かっている人の方が、有利に昇給、昇進対象となる。どうも釈然としない。そこで、阿綺子さんは、毎月提出される残業許可書の精査を開始した。「残務整理」「取引先との電話連絡」等々まことしやかな内容の数々・・・(嘘だとは思わないが、繁忙期でもないのに、毎月毎月コピーのような同じ内容で、よく上司が承認印を押すなあ〜もし本当ならどうして時間内に切り上げられるよう、上司としてアドバイスをしないのだろうか?)だんだんと疑問が膨れ上がり、唐突とも思われる提案をする。「タイムマネジメントコンクール」だ。これは、いたって単純。社員一人一人が今までの仕事のやり方→改善したところ、それによって残業時間がどれだけ減り、公私とも善くなったかを記入してもらい、実際と照らし合わせてよい成果を上げた社員を表彰するものだ。

○  阿綺子さんが、会社に与えた利益。

 全社員とまではいかないが、阿綺子さんの熱意が人事部長に伝わり試験的に事務系管理部門の社員を対象にコンクールは行われた。残業手当による人件費も減ったが、事務系管理部門の所属社員の中には、有益な働き方はどうすればよいのか、個々に思案する者が増えた。

コンクール実行年度の決算書は…

人件費(損益計算書の中の費用)・・・→ 減 → 利益アップ。

○ その後の 阿綺子さん

 人事部で重要な位置を占める社員に成長。給与計算は阿綺子さんの提案でアウトソーシングすることになった。現在の仕事は、採用担当。自ら会社の利益を潤すことが出来る頼もしい新人や実務経験者を発掘するのに多忙な毎日。今後はさらに人事の仕事を極めるのが目標。将来は全社員のスキルアドバイスや仕事上の悩みを解決できる、相談役も視野に入れている。

 

解説―阿綺子さんが巻き起こした風とは…

● 事務職の「成果主義」ってなに?

 近年は「成果主義」をテーマにした書物をとても多く見かけます。メジャーなビジネス誌ではひっきりなしに関連の記事を掲載しています。しかし、内容は千差万別でも「会社に利益をもたらす仕事をしたかどうか」を基準に評価することは、どこの企業も同じではないでしょうか?とは言っても「事務職」の成果主義はあまりコアなところまで研究されていないように思います。 問われることは、業務の「正確性」や「スピード」、中堅社員に対してはプラス「よく研究しているか」などが評価基準で、あまり「利益追求」のことは問われていないような気がします。裏話では評価基準が曖昧な会社は、上司とソリが合う人や付き合い残業も喜んでやってのける人が昇進、昇給してしまう怖いケースもあるようです。

 人事部の阿綺子さんは、その悪習慣である「残業」に着目しました。事務管理部門の人達に、「あなたが行ったその時間外労働は、会社のためになることですか?定時間になぜ出来ないのですか?」を問う機会を作り上げたのです。事務系社員対象に「タイムマネジメントコンクール」を開催し、ムダな「時間外労働」を排除した結果、会社に利益をもたらすことが出来ました。しかし一方で、こんな疑問もありませんか?会社に利益をもたらすことが出来ても、コンクールの対象となった事務系社員は「残業手当」が減ってしまい、公私共に潤った生活など実現できないのではないか?
そんな疑問を持つあなたはこの連載をヒントにし、あなたは「利益やキャッシュを生み出す人材」へと変身して昇給、昇進を遂げれば良いのです。
「そんな 簡単に言わないでよ〜」そんな声も聞こえてきそうです。実は、今回阿綺子さんはもう1つあなたにヒントをプレゼントしています。

● 阿綺子さんからもう1つのビジネスヒント・・・「あなたの成果は記録に残そう!」

 阿綺子さんが提案した「タイムマネジメントコンクール」これは事務系社員1人1人がいかに業務の効率を上げ、公私共に良くなったかを書いてもらうという方法でした。

 このコンクール自体のアイディアも良いのですが、「書いてもらう=記録してもらう」ということが事務系社員にとってとても「重要」なのです。

 事務系は、評価基準の1つである「利益貢献度」が営業系に比べ不透明なことも事実。
あなたもせっかく会社の利益のためアイディアを出し、実際に行動しても「あなたの成果」になっているかどうか・・・不安ですよね。

 評価基準材料として正式フォーマットに「自己申告制度」などが導入されていれば一番良いのですが、なければ独自の方法で「成果を記録」するべきです。手帳でも、パソコン内に入力するのも良いでしょう。たとえば、「〇月〇日 □□部長に、コピー機をもっと作業精度の高い機種へ契約変更する企画書を提出する。」「△月△日、承認、導入される。契約料も月々何円やすく、作業スピードが速いため資料づくりの苦労も半減し、膨大な資料コピーのための無駄な残業が導入前の時と比べ、何%減った。」と明確に自分のプランの実行前と実行後にどのくらい変化があったか、記録を残すのです。出来れば具体的な数値で示して書くと尚良いでしょう。そしてやがて訪れるサラリーマンにとっての「成績表」・・・そう!「ボーナス」や「昇給」時期にあなたが記録した「成果記録」と照らし合わせて、自分の中で妥当な評価かどうか判断が出来ます。もし納得がいかなかったら?その「記録」を評価者に提示し、理由を尋ねることが出来ます。自信を持って取り組んだあなたの仕事なのだから、納得がいかなければ理由を聞くのは当然。そんな前向きで勇気ある行動を取ったあなたは、一目置かれる人材になるでしょう。有力者から価値あるアドバイスが得られるかもしれません。また、すぐに評価があがらなくても記録は真実であり、「あなたの成果」には違いないのです。諦めず再びトライすれば、あなたの姿勢はいつかは認められるはずです。

 



こんな見方もできる!決算書

 今回は、第1回目で登場した「損益計算書」内の項目を見て人件費と売上総利益に着目し、「生産性」について述べたいと思います。阿綺子さんは「ムダな人件費」に着目しました。

 適正な人件費で、いつも利益を創造できる体制が会社経営の理想です。そこで「売上総利益(粗利)」(第1回営業事務 波留子さん参照)を会社の付加価値と考えその数字に対して、人件費がどれだけ占められているかつまり、付加価値からどれだけ人件費を排出しているかを見る指標が「労働分配率」といいます。厳密に付加価値とは、純粋に自社の力のみで創造した利益(価値)のことです。算出方法は下段に2通り説明がありますが、簡易的な方法で付加価値=売上総利益と考えて計算すると概ね解ります。

 労働分配率の数値が高ければ高いほど、高い人件費を使っていることになります。またギリギリの人件費を使っていても利益を生み出す仕事をしていない人が多いとも考えられます。そんな会社は「生産性が悪い!」という評価をすることになります。

 一般的な指標は、業種によって異なりますが概ね日本の企業の平均は50%位です。
あなたの会社の損益計算書を見て、過去数年間分を算出してください。変化はありますか?

 年々率が上がっていたら要注意。また同業他社と比べてみてください。同じ商売をやっているのに低い場合は、人件費の使い方についてどんな違いがあるか、他社から情報を得るのも良いと思います。

 職種を問わず社員一人一人が利益(価値)を創造すれば、労働分配率を下げ、生産性を上げることにつながるのです。

 
 

◆ これが損益計算書

・労働生産性を見てみよう!

(↑クリックで拡大画像が表示されます。)

 

田村夕美子さんのプロフィール

 新潟ファイナンシャルプランニング 経理環境改善コンサルタント。建設業、エステ業、化粧品販売、フードビジネス等20年に渡り幅広い業種の経理を担当。一担当者から総括、管理職など様々な立場を経験。
 近年では、医療法人にてサラリー経理ウーマンとして働く傍ら、夫が立ち上げたファイナンシャルプランニング事務所の経営プランニング担当として活動中。又、経理情報雑誌に誌上講座も執筆している。
 “現場に強い!利益とキャッシュと幸せを生む経理”をモットーに自らを「経理環境改善コンサルタント」と命名し、中小企業の経理担当者のマインドを高める使者を目指す。

◆田村夕美子さんからのメッセージ
このたびの「新潟県中越地震」にて被災された方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

●新潟ファイナンシャルプランニング ・・・ http://nfp.cc

 

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