| ● 今までの仕事は、時代遅れ?― キャリヤウーマンの危機?!
「正確に出来て当たり前」「地味」「こわい」など華やかなスポットライトに照らされることはまず難しい「経理部」
風香さんもその「日のあたらない部署」で働く一人だ。ウーマン商事に入社して、今年で丸10年になる。入社当初よりずっと「経理部」に所属している。
でも風香さんは、他の部署の人が経理業務をどの様に判断しようとまったく気にしない。
なぜなら彼女は自分の仕事に「自信」をもっているからだ。
仕事の正確性は天下一品!もちろん決算書など読めて当たり前。向上心も高く、経営分析などに関する書籍も読み漁り実務にどう直結させていくか、試行錯誤できるのも経理の醍醐味だ。
そんな姿勢が買われ最近では、予算管理や資金繰りなど経理部内でも主要な業務も任せられている。
「さーて、次期はいよいよ昇進できそうかな?」そんな期待に胸も膨らませ、日々数値の分析には余念がない。
夢中で仕事をすると帰宅はいつも、深夜にまで及んでしまう。でも、会社の今後の舵取りをどう方向付けるか、風香さんなりのプランニングを上司、役員たちに提案したい・・・
しかし、風香さんにあるピンチが訪れた。人事部よりの発令で「タイムマネジメントコンクール」(第3回 人事部 阿綺子さん参照)を実施するとのこと。しかも事務部門のみ対象なのですって!
自分のがんばりは、「無駄な人件費」のはずがない。
なぜなら、わたしは「経営管理者」だから・・・社内でも重要な数字を扱うキーパーソンのはず。
社内業務の中で、無駄なことは一切していない。
たとえば、部署外の人との交流会への不参加。ウーマン商事では定期的に終業後、異なる部署同士の情報交換やコミュニケーションを図ってもらおうという主旨のもと、肩書を問わず希望制で交流会を開いている。新入社員のころは風香さんも参加していた。
しかし実際は、仕事とは直結していないムダ話を交わす座談会のような気がして自然に足が遠のくようになった。
「わたしは、他の社員とは違う。」そんな意識が芽生えた風香さんは「交流会」に出席するより、自己の経理職をもっと極めようと勉強に実務に磨きをかけたはずである。
それを、「事務職=間接部門 すなわち・・・扶養(不要)家族」こんな一辺倒な図式にはめ込まれ「残業ゼロ目標、会社に余計な人件費を排除しよう!」ですって?冗談じゃないこんな提案をした人事部はどうかしている!
納得がいかない風香さんは直属上司を通し、人事部長へ「タイムマネジメントコンクール」を実施する主旨を尋ねることにした。
上司の意向で、風香さんが直接人事部長のもとへ尋ねることに。
とにかく人事部の偏見を、改めてもらいたい。それに加え風香さん自身のアピールも忘れなかった。決算のデータをいかに細かなところまで、分析しているか、それに止まらず実務を極めるために経営の勉強も続けている点を話し、自分がいかに会社に貢献しているかを語った。
人事部長からの回答はこうだった。
「風香さん、あなたは我が社の数字を熟知しているようですね。でも、あなたほど数字には強くないでしょうが、経理部以外の事務系女性社員も我が社の利益をうみだすために、自身の市場価値をアップさせるため、目覚しい貢献をした人が何人かいるのですよ。」
営業部、庶務部、人事部 実名こそ教えてもらえなかったが、風香さんは経理畑ではない女性社員が決算書などを読みこなす勉強をして、少しでも自分の力でまた他の社員の協力も得ながら、ウーマン商事を盛り立てる仕事を遂げたことに衝撃を感じた。
なんと、風香さんが今憤りを感じている「タイムマネジメントコンクール」も人事部の女性社員が提案したことで、定時間内でいかに有益な仕事を成し遂げることができるか考える場を設けることが主旨だと聞き、ショックで辱めさえ感じた。
今や決算書を読めることは一般常識・・・決算書作成、財務分析や予算管理には自信があった。これらの業務は完璧にこなしたつもりだが私は過去に「〇〇を行って会社に○円利益をもたらすことが出来ました。」と手ごたえのある仕事をやり遂げたことがあっただろうか?
● ステップアップの鍵・・・人事部 阿綺子さんとの出会い
私は、今後どうしたら良いのだろう・・・決算書作成や財務分析ができることなど、経理担当者の「武器」とは言えない時代。
悶々しながら、風香さんは気分転換に暫く足が遠のいていた「交流会」へ出席することに。
その様子は風香さんが、想像していたものとは異なりかなり活気が溢れていた。
毎回テーマを決めて、他の部署の人たちとディスカッションをする。
(今回は何のテーマについて、話をしているのだろう?)すでに会議は始まっていたので風香さんは中々空気が読めない。
営業や企画室、秘書課、庶務、人事部などなどネームプレートからは部署名が読み取れるが、あいにく話をしたことが無い人ばかりだ。
そんな状況を察したのか、姿勢正しくダークグレーのスーツをビシット着こなしている女性が小声で、笑顔を見せながら風香さんに声をかけてきた。
「初めまして、人事部の山本阿綺子(あきこ)です。」
少し救われた気がした風香さん。とりあえず風香さんも部署名と名前を告げ、「今回のテーマは何ですか?」と尋ねる。
「私が提案させて頂いた『タイムマネジメントコンクール』のその後の効果について、話をすることになったのです。公式ではないのですが、ラフな交流会でぽんぽんでてくる発言の方が、すごく参考になるし・・・今後の仕事にも展開出来そうで。」
(あっ!この人が例の人・・・)言葉に出そうか迷っていると、会も終了に近づいた様子。
阿綺子さんは軽く風香さんに会釈をして、椅子から立ち上がる。どうやら議長も兼ねているらしい。様々な部署から集まった本音をまとめ、会を締めくくる。
風香さんの予想に反して、目覚しい進化を遂げた交流会。ただの気分転換と思って参加しただけに、ショックも感じたが帰りがけに阿綺子さんから、受けた言葉に今後の風香さんの“新風”ヒントがあった。
「風香さんは、経理部でお仕事しているのですね。ほかの部署のどんなお偉方よりも会社の情報をキャッチしているのでしょう?」
● 風香さんの新風・・・戦略経理チーム出動!「あなたの仕事をこう変えれば、会社のキャッシュを増やせる!」をテーマに各部署を訪問 ランチサミット開始。
「営業部のみなさん、社にもどってクライアントとの商談をまとめ回答をメールし、見積書の作成やら納品確認また営業日報記録などなどITを駆使しながらの情報処理が山積みのことでしょう。だけど、肝心のてがらである売上伝票はいまだに紙ベースで事務担当者に、パサパサ渡していない?あなたのてがらである売上は、あなただけでなく全社にとって大切な成果!これこそ現場にいながら社内メールを活用して、早期に事務担当者に伝達出来る仕組みが出来ないかしら?もし、実現出来たらあなたも残業時間が減るしプライベートも充実出来るでしょ。おまけに我が社のキャッシュフローは、現行と比べ15%位プラスに転じるのでは。その分私たちのボーナスもアップするかもよ。」
「生産管理部のみなさん、このA商品の有り高が毎月上昇しています。きっとクライアントからのニーズも高いのでしょう。それは素晴らしいこと!でもね、この商品は粗利益も高い上 ストックが多いだけで多大なる利益が計上されます。クライアントへ販売し、現金化されるまで具体的な日数計算まで計画されているの?残念ながら、売れていない商品ストックも経理上は、『資産』なの“在庫”を“罪庫”にしないで。」
又今日も、とある部署で風香さん達の明るく元気な声が響く。
主任に昇格した風香さんは早速、新生戦略経理チームを発足させる。そしてこのチームメンバーで、「あなたの仕事をこう変えることで、キャッシュが生まれる」をテーマに昼休憩時に日によって部署を変え、メッセージを伝えるため訪問するのだ。上からものを云うような言い方などしない。そして相手の部署の現状や悩みなどを聞き、経理部サイドから出来るアドバイスもしている。ランチを持ち寄り他の部署へ出向いて、食事もとりながらのラフなサミット。
「昼休みに仕事のはなし?おまけに経理部の堅いお叱りなど冗談じゃない!」最初はこんな声も聞こえたが、風香さんが発案した「ランチサミット」は、とても内容がわかりやすくユーモアにも溢れ、自然と訪問先の部署の人たちが、ランチを持ち寄って風香さん達に集まるようになった。
風香さんが新風を巻き起こした年度の、ウーマン商事のキャッシュフローは・・・
営業活動におけるキャッシュフロー・・・前年比 20%アップ
○ その後の風香さん
戦略経理チームの活躍ぶりは年々上昇気流に。後輩経理部員を育てることに生きがいを見出すようになる。目覚しい成長をみると、とても喜びを感じる。
さて、今日のリーダーは誰にしようか?ランチサミットも続けており、サミットリーダーを自分から後輩に譲っている。後輩を優秀な人材に育て上げるため、試行錯誤の毎日だ。
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