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「産業翻訳」とは、民間企業や官公庁などの業務上で必要となる翻訳のこと。「実務翻訳」「ビジネス翻訳」とも呼ばれます。翻訳する文書は、マニュアルや契約書、パンフレット、特許文書や学術論文などさまざま。扱う分野も、コンピュータや機械・電気、経済・金融、医学・薬学など多彩です。結城真悠さんが手がけるのも、プログラムやシステムの技術系マニュアル、電気製品や装置の仕様書、ソフトウェアメーカーのプレスリリース、国際会議の報告書など、多岐に渡ります。
外国語大学で学び、アメリカの大学へ2年半留学した経験もある結城さん。翻訳者になった直接のきっかけは、派遣翻訳者としてメーカーに勤めたことでした。派遣期間終了後も、同じ会社から依頼されたり、他の会社へ派遣されたりするうちに「気がついたらフリーの翻訳者になっていた」のだそう。翻訳者が集まるインターネットのコミュニティに参加したり、セミナーに積極的に足を運ぶうちに、自然と人脈も広がり、仕事が途切れることはありませんでした。そして、2000年に現在の会社を設立。「法人化したことにより、大手のクライアントと取引しやすくなり、仕事の幅も広がりました」。
翻訳者は語学力があって当然。そのため、翻訳業界では英検やTOEICなど、語学系の資格は重視されないのが実状です。その一方で、仕事を得るために有利になるのが、留学経験と専門知識。「翻訳では、異文化への理解が欠かせないので、留学経験のある人は有利。留学経験がなくても、社内で長く契約書の作成に携わってきたとか、プログラマーの経験が長いなど、語学+αの部分でアピールできるものがあれば、比較的仕事を得やすいと思います」。
産業翻訳者が手がける文書は、テクニカルで専門的。翻訳するには、その分野の専門知識がかなり必要とされます。でも、「専門知識がなければ、産業翻訳者になれない」というわけではありません。結城さんの場合、プログラミングなどの知識はすべて独学。「目の前の文書を何とか翻訳して納品しなければならない、しかし内容はチンプンカンプン」という状況の中、必死で勉強したのだそう。「今でも実際のプログラミングはできませんし、興味もありません。でも、機械語などを知らない若いプログラマよりは知っていることは多いと思います」。
翻訳者に必要なスキルを優先度の高い順に5つ挙げると、「1.日本語能力、2.英語(外国語)能力、3.専門知識、4.パソコンスキル、5.リサーチスキル」だと結城さんは言います。「翻訳者を目指すなら、これら5つの要素で、自分に欠けているものを中心に勉強していくとよいと思います」。また、英語力に自信がある人は、翻訳会社で実施されているトライアルを受けるのもオススメ。翻訳で求められるレベルと、自分の能力との差を知るめやすになります。
翻訳者に向いているのは「忍耐強く最後まで頑張れる人」。どんなに簡単に思える単語でも、「もしかしたら、自分の思っている意味と違う意味があるのかもしれない」と、逐一辞書を開いて調べる根気が必要です。「経験を積んだ翻訳者には、とことんこだわるタイプの完璧主義者が多いですね」。 |