【 file63 治験コーディネーター 】
「治験」とは、新しい薬の候補(治験薬)が安全で効果があることを確認するために、製薬メーカーから依頼された医療機関が一般の人(治験を受けてくれる患者さん。以下、被験者)を集め、計画書に基づき実施するものです。この治験に関わる職種に「治験コーディネーター」があります。今回は、その治験コーディネーターの羽場美樹さんにお話を伺いました
■■ プロフィール ■■

【 羽場美樹さん 】

●治験コーディネーター歴3年。40歳
●治験施設支援機関である、ハイクリップス札幌支店エリア部長。治験コーディネーター業務を担当しながら、支店の運営にも関わっています。


【治験コーディネーターの仕事内容】

「治験コーディネーター」(CRC:Clinical Research Coordinator)は、病院などの医療機関において、治験を実施・推進・サポートする仕事。製薬メーカー、医療機関、患者との間をとりもつ役割を果たしています。医療機関の職員である「院内CRC」と、治験施設支援機関から派遣される「院外CRC」とがあり、羽場さんの場合は後者です。


【治験コーディネーターへの道】

羽場美樹さんは、大学の薬学部を卒業後、病院の薬剤部や製薬メーカーなどに勤めました。治験コーディネーターという仕事を知ったのは、メーカー勤務時代。治験に関する説明会に出席したところ、審査や体制づくりなどが非常に煩雑で、専門職種の必要性を確信したのです。その後、アメリカには治験コーディネーターという職種があり、日本国内でも導入されつつあることを知りました。新しい職種だからこそ、女性が活躍できるのではという思いを抱き、治験施設支援機関に転職、現在に至っています。

治験コーディネーターには、今のところ国家資格がありません。羽場さんが勤めている会社の場合、薬剤師や看護師などの医療関連資格を持っている人材を採用して、社内で研修を実施。さらに、研修後の社内試験に合格した社員に対して、OJT教育を施しながら、一人前の治験コーディネーターとして育て上げ、医療機関に派遣します。なお、日本臨床薬理学会では、2003年から「認定CRC」という制度を開始し、実務経験のある治験コーディネーターに対して、資格試験を実施しています。


【羽場さんの一日】
<被験者が来院する日の場合>
6時: 起床。メールチェック。
7時半: 会社に立ち寄らず、担当の病院へ直行。
8時半: 関係部署に挨拶し、当日の予定を確認。
9時: 来院した被験者に会って、体調などの聞き取り。
9時半: 医師の診察、治験薬の処方に同席。
10時: 治験薬の投薬に立ち会い、被験者を送り出す。
11時: 症例報告書の記入。
15時: 医師との打ち合わせ。
16時: 製薬メーカーの開発担当者にメールで報告。
17時: 会社へ移動。
17時半: 業務報告書を作成。メールチェック。
19時: 帰宅。
22時: 次に担当する治験についての勉強。
24時: 就寝。

【羽場さんにお話を伺って…】

治験コーディネーターは、製薬メーカー、医療機関、被験者の間のパイプ役。その仕事は、治験開始前の打ち合わせから、服薬や通院などのスケジュール管理、製薬メーカー開発担当者への報告業務まで、多岐にわたります。治験をスムーズに進めるために、人間関係をうまく調整するスキルが不可欠です。

被験者の精神面のフォローも大切な仕事。治験の結果、副作用が発見され製薬メーカーが開発中止を決めたとき、「副作用があっても、この新薬を続けたい!」と訴える被験者もまれにいます。被験者の方は、病気を治そうと必死なので、そんなときは製薬メーカーと被験者の間に入り、つらい思いをしたとか。「じっくりと説明をして、治験終了を納得してもらいました」。

薬は、治験という厳しいプロセスを経て、厚生労働省に認可され販売されます。「治験は、被験者となった患者さんの『善意』のうえに成り立つもの。患者さんへの正確な情報提供や、わかりやすい説明がもっとも大切だと思います。そして、『感謝の気持ちと微笑み』を忘れずに、業務にあたるよう心がけています」。


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