【 file67 フリージャーナリスト 】
昨年4月に起こった日本人人質事件をめぐり話題になった1冊の本『アマチュアはイラクに入るな』(亜紀書房)。今回は、その著者であるフリージャーナリスト、吉田鈴香さんにお話を伺いました。
■■ プロフィール ■■

【 吉田 鈴香さん 】

●フリージャーナリスト歴16年。46歳
●コンサルタント会社「スー・インターナショナル」代表、立教大学大学院および国士舘大学講師。著書に、『NGOが世界を拓く』(亜紀書房)など多数。


【フリージャーナリストの仕事内容】

世界の紛争地に赴き、精力的に取材を続けている吉田鈴香さん。ジャーナリストの仕事は、まず“問題の発見”から始まります。「センスが鈍っている人や、与えられたテーマを追っているだけの人では無理があります。感情論や反政府VS親政府などの二元論に陥らないように、常日ごろから本や論文を読んだり、多くの人の話を聞いたりして、勉強する姿勢が必要です」。テーマが見つかったら、情報を集め、取材、執筆を行います。取材のための資金集めや、原稿の掲載先を獲得するのも、ジャーナリスト自身の仕事です。

紛争地の取材には、現地の治安状況の調査、政治勢力のリーダーとのコンタクトなどの準備に2〜3カ月をかけるとか。「そこまで周到に準備しても、命を落としそうになったことはあります。紛争地の取材では、“引き返す”というオプションも必要なのです」。それでも吉田さんは、現地取材にこだわります。「自分の目で確かめた情報だからこそ、自信を持って紹介できます。また、生の情報に触れながら湧いてくる疑問こそ、ジャーナリストには最も大事な、次の“問題の発見”につながるのです」。

仕事の魅力について、「自分の主張を世の中に問いかけ、その反応が返ってくるところ。よい原稿を書けば、社会に影響力を及ぼすこともできるのです」と語る吉田さん。反面、社会から批判されるリスクも背負わなければなりませんが、その毎日の緊張感すら楽しんでいる様子です。


【フリージャーナリストへの道】

フリージャーナリストになる前は、広告代理店やPR会社などに所属しながら、ライター活動を行っていました。「忙殺されて身体的にも限界。与えられた事象を追いかけるだけでなく、より創造的な仕事がしたくなり、フリーになりました」。そして、国際協力、さらには国際問題全般への関心が深まるにつれて、理論から学ぶ必要性を感じ、大学院に入って「開発経済」を専攻。「大学院で学べたことが仕事への自信につながり、ここから人脈も広がりました。以後、自分のライフワークとして国際問題を手がけています」。


【吉田さんの一日】
<大学に行かない日の場合>
6時半: 起床。新聞に目を通す
7時半: 朝食の支度、洗濯
8時: テレビとラジオでニュース報道を聞きながら身支度
9時: 前日書いた原稿の読み返し、原稿執筆
10時半: 出勤。通勤途中に新原稿の構想練り
11時: 会社に到着。Webでニュース検索。メールチェック。原稿執筆
13時: 昼食
14時: 取材へ。取材がないときには会議
17時半: 帰社。取材ポイントの整理
18時半: 欧米のメディア配信記事のWeb検索とメールチェック
19時半: 帰宅。夕食。あるいは会食に出かける
21時: 企画書を書くか、資料を読む
23時: 就寝前にWebニュースのチェック
24時: 布団の中で読書してから就寝

※朝9時から出勤前の時間が、最も頭が冴えているので貴重

【吉田さんにお話を伺って…】

「上手な文章を書くのがジャーナリストではありません」と、吉田さんは言います。「ジャーナリストを目指すなら、良書を多く読み、分析力を磨くこと。物事の事象、背景、問題、提言をチャートにしたり、さまざまな問題を紙1枚に箇条書きで解説・論評したりなどの鍛錬をするといいでしょう」。ジャーナリストになることが目的ではなく、大切なのは、ジャーナリストになって何をするのかということ。「ジャーナリズムには社会貢献のミッションが託されています。ぜひ、世直し改革に役立つような記事を書いてほしいと思います」。

吉田さんにとって「フリージャーナリスト」という職業は、情報発信の1つの手段に過ぎません。コンサルタントとして発展途上国の開発援助・コミュニケーション戦略を作成したり、大学で教鞭を取ったりもしており、どれも重要な柱になっています。吉田さんの働き方は、国際問題という大きなテーマについて、3つの業態で発信するという、新しいスタイルなのかもしれません。「ジャーナリズムは外からドアをたたき、黄信号を出す役割。政府などに判断材料を提供することができます。一方、コンサルタントは内側から改革を実践できます。両方からの改革アプローチを入手できたことは、私なりの成果だと思っています」。


【アマチュアはイラクに入るな ― プロのNGOが紛争地でやっていること】
●亜紀書房/1785円

平和構築活動に携わるNGO(非政府組織)のプロフェッショナルな仕事ぶりを分かりやすく説明する一方で、その援助活動の難しさも紹介した1冊。昨年4月にイラクで発生した日本人人質事件をめぐり世間が揺れる中、アマチュアボランティアの活動について率直な意見を書いた著書は、発売前から賛否両論を巻き起こした。ボランティア精神だけでは本当の援助はできないのか? NGOはプロの仕事であると当たり前のように認められている欧米のケースを紹介しつつ、紛争地帯での援助活動、平和構築までのステップを詳しく解説する。


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