【 file68 音楽療法士 】
ヒーリングなど、音楽による癒しの効果はよく知られるところ。今回は、音楽療法士、田戸 悠実恵(たど ゆみえ)さんにお話を伺いました。
■■ プロフィール ■■

【 田戸 悠実恵さん 】

●音楽療法士歴16年。37歳
●音楽療法士としての施療活動のほか、講義や講演、一般・学術誌への執筆・研究発表など、幅広く活躍中。また、音楽療法CDの監修なども行っている。


【音楽療法士の仕事内容】

音楽療法士とは、認知症(痴呆症)の予防に熱心な長寿世代や、心や体にダメージを持つ人たちに対し、「音」や「音楽」を通して心理療法を行う専門家です。

療法には大きく分けて、受容的音楽療法と能動的音楽療法の 2つがあります。受容的音楽療法は、音楽を聞くことで、心身の安定・改善をはかるもの。たとえば、病院の待合室などで流れているクラシック音楽などは、広い意味での受容的音楽療法です。一方、能動的音楽療法は、患者に楽器を演奏させたり、音楽を聴かせることで、積極的に疾患の改善を促すもの。音楽療法士はこれらの手法を組み合わせて施療を行います。

最初に音楽療法士が行うのは、患者のインテーク情報(医師など関係者が行った調査)の確認。この情報をふまえて、患者と面接したり、調査(アセスメント)を行い、音楽療法士としての所見を出します。そして、患者にとって最適と思われる処方箋を書き上げ、患者や家族、医師などの関係者に説明(インフォームド・コンセント)。同意を得られれば、処方を実践します。期間を終えたら経過観察に入るという流れで、患者とともに施療をすすめていきます。


【音楽療法士への道】

田戸さんは、音楽教育家の両親のもとに生まれ、音楽を日常的に学べる環境で育ちました。その中で、音楽はうつ状態など心身のケアに有効であると知り、音楽療法を専門とする仕事をしたいと思っていたのだそう。大学の音楽科に入り、ピアノやうた(声楽)、作曲、ハープ、ソルフェージュなどの専門教育を受け、教職課程も修めました。

大学卒業後には、音楽を教える専門校(岐阜音楽院)に就職。音楽療法を専門に行いたいと考えていた田戸さんは、仕事のかたわら、音楽療法、臨床心理学・カウンセリング技術などを勉強し、精神病院や療育施設などで臨床経験を積みました。そして、長年の臨床実績などによって、日本音楽療法学会より、音楽療法士として認定されたのです。現在では岐阜音楽院の副院長も務めています。

音楽療法士としての資格は、日本音楽療法学会認定資格のほかにも、複数の民間認定や地方自治体の発行する認定があります。とはいえ、資格を取れば仕事につながる、というわけではありません。音楽療法の職場は日本では未開拓分野のために、ボランティアの形で行われていることも多いからです。田戸さんご自身、「職場を探すには、自分で切り開いていくことが大切です。しかも地力がないと、患者様や利用者様から信頼される仕事はできないですね」とおっしゃっています。


【田戸さんの一日】
6時: 起床
6時半: 家事
8時半: 出勤
9時: 音楽院での施療
12時: 昼食
13時: 院内カンファレンス、院外講義
16時: 音楽院での施療
18時: 執筆
18時半: 退社
19時: 家事(当番制)
23時: おひとり様時間
25時: 就寝

【田戸さんにお話を伺って…】

ストレスの多い現代。田戸さんのところに、心の病を抱えて訪れるワーキングウーマンも増えているとか。実際に接してみると、疲れを溜め込みながら、懸命に働いているなあと感じるのだそう。「そんな人々の役に立ちたい、喜んでいただきたい」と、田戸さんの中にあるプロ意識とサービス精神が湧きあがって、仕事への情熱につながっているようです。

現在、田戸さんは、音楽療法の有効性を科学的にとらえる研究や、臨床報告、講演・執筆などを積極的に行っています。「これらの活動を通じて、音楽療法の普及・発展と、音楽療法士が国家資格として認定されるように法が整備されることを願っています」。


【ミュージック・セラピー オムニバスCD-BOX】
●東芝EMI/8000円

田戸さん監修による、主に長寿世代対応の音楽療法CD。音楽療法の手引きも付属。CD4枚組全85曲。


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