【 file71 獣医師 】
コミックやドラマでも人気の「動物のお医者さん」。今回は、獣医師の増川薫さんにお話を伺いました。
■■ プロフィール ■■

【 増川 薫さん 】

●獣医師歴21年。45歳。
●同業者の夫、18歳の♂猫、5歳の介助犬だった♂のラブラドールリトリバーと同居中。


【獣医師の仕事内容】

獣医師と聞いてまず思い浮かぶのは、犬や猫などを診療する動物病院のお医者さん。でも実際には「動物の病気を治す」ことだけが仕事ではなく、それ以外の分野でも多く活躍しています。たとえば、市町村や農協などの診療施設で、家畜の病気の予防・治療などを行っているのも獣医師です。保健所や畜産試験場などに就職して、家畜の飼育・衛生管理などを行ったり、大学や民間企業などで研究開発に携わっている人も多いそうです。

増川さんの場合は、夫婦で開業している動物病院の獣医師。ペットの犬や猫、フェレットやウサギなどの小動物の診療をしています。また、公立小学校の飼育動物の健康管理指導を行ったり、補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)普及のボランティアにも参加しています。

動物好きの増川さんにとってやりがいのある職場ですが、体力面ではかなりきつい仕事。増川さんいわく、獣医師は「3K職場」だそうです。朝から晩まで立ちっぱなしで、力のある動物と力比べをしなければならないことも。体力や気力がなえていると、動物にかまれたり、引っかかれたりといった事故を起こしやすくなります。「今まで手足を失わずに、よく無事にこられたと思うくらいです」


【獣医師への道】

小さい頃から動物好きだったという増川さん。家族の一員として、気がつけば、いつも犬や猫、鳥に囲まれて暮らしていたとか。さらに高校で生物学に出会い、生命、生物体の不思議を知ったことが、本格的に獣医師を志すきっかけとなりました。

獣医師になるには、大学の獣医学科で 6年間学ぶ必要があります。獣医学科のある大学は全国にも10数校しかなく、大変狭き門。また、大学に入ってからも猛勉強が必要です。卒業時に難関といわれる国家試験を受け、合格すれば晴れて獣医師となれます。

増川さんは獣医師免許を取得してから、動物病院に就職し、インターンとして 2年半の経験を積みました。この臨床現場で、飼い主との対応のしかた、動物の扱い方、処置・手術・検査のしかた、経営学など、臨床医としての実践知識を学びます。その後、夫とともに病院を開業し、現在に至っています。

増川さんの大学在学中には、一学年120名中、女子学生は わずか10名ほど。増川さんが仕事を始めた20年前には、まれな存在の女性獣医師でしたが、最近では人数も増え、社会的な知名度も確立してきているようです。「獣医師は女性に向いているのではないでしょうか。言葉を持たない動物の“声無き声”を聞き取る能力について、女性は優れています。動物側も女性に対しては警戒心を解いてくれやすく、治療効率もあがっていると思います」


【増川さんの一日】
7時: 起床。身支度や愛猫、愛犬のケア
8時半: 出勤。開院準備
9時: 午前の診察開始
12時半: 昼食
13時: 外科手術や処置。レントゲン、エコー等の検査
16時: 午後の診察
19時: 午後の診察受付終了、入院している動物のの治療や文献調べ
21時半: 夕食
23時: 家事等、家の中の仕事
25時: 就寝

【増川さんにお話を伺って…】

インタビューの中で一番考えさせられたのは、次の言葉。「動物とのコミュニケーションは経験でカバーできます。けれど、医療の現場で一番大切で、そしてときに難しいと感じるのは、飼い主さんの理解を得ることです」

それでも、“動物と家族の笑顔が戻ってきた瞬間”に支えられて、増川さんは仕事を続けています。「病気になれば、動物も、飼っている家族も同様に苦しみます。元気になって、病気の苦痛から解放された動物たちの顔、そして、心配から解放された飼い主の顔を見たとき、この仕事をしていてよかったと感じます」

最後に、ご自身の決意を力強く語ってくださいました。「病気に対して、私たち獣医師のお手伝いできることは限られていると思います。やはり動物それぞれの持っている生命力で、病気に対する勝負は決まることも多いです。それでも、病気という見えない相手に、できる限りの勝負を挑んでいきます」

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