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      ◇◇ 2007年 1月のカルチャー情報 ◇◇

  【本】 蒼の風景
  【本】 蝶か蛾か
  【音楽】 TERMINAL
 

【舞台】 橋を渡ったら泣け

  【 本 】
 

【 蒼の風景 】
●アートン/1785円

生まれたばかりの息子・創を連れ、散歩をする杏。留学時代のかつての女友達からメールが届き、過去の記憶が蘇る。小さな赤ん坊に乳を含ませながら、若かりし日には答えられなかった回答がここにある、と杏は気付いていく…。(『蒼の風景』)。PR誌『あとん』に掲載された短編を書籍化。表題作を含む全15編を収録。少女期、思春期、旅、過去、現在、出産など幅広いテーマをもとに、現実と夢との境界を幻想的に描き、不思議な読後感をもたらす短編集。


【インタビュー】

人生の大きな転機を迎えて『蒼の風景』収録の短編を書き始めた、と中上紀さんは言う。その転機とは出産。「子どもが生まれた瞬間、1カ月後、2カ月後、3カ月後と、自分がどんどん変化していく。そのときにしかない独特のエネルギーを書き留めていったんです。まるでもう一度出産するかのように」

出産を体験する女性・杏を主人公にした表題作の他、思春期直前の少女と父親の二人旅行、カリフォルニアの学校に通う女子高生の物語など、テーマは幅広い。だがやはり印象が強いのは出産や育児を描く数編だろう。小さな命を抱く産婦の心情がみずみずしく伝わってくる。これまで繰り返し「旅」をモチーフにしてきた中上さんにとって、出産もまた「旅の続き」なのだそう。「自分の足でいろいろな所に行きましたが、同じ道の上に出産もある。妊娠は体の変化を実感し、本当に面白かったんです」
(インタビューの続きは本誌で…)

●中上紀さん
71年東京都生まれ。ハワイ州ハワイ大学美術学部卒業。「彼女のブレンカ」ですばる文学賞受賞。著書に『イラワジの赤い花』『水の宴』(以上集英社)、『アジア熱』(大田出版)、『夢の船旅――父中上健次と熊野』(河出書房新社)など著書多数。現在は1歳10カ月の息子を育てながら執筆活動に専念している。「ご飯を作るので精一杯」と冗談めかしつつも、「出産後、精神力も含めてパワーアップしました。仕事も前より増えていて、こなせているんです」

  【 本 】
 

【 蝶か蛾か 】
●文藝春秋/1800円

主人公の満々子は「産後の肥立ちが悪かったので」、タガが外れてしまった47歳のシングルマザー。かつては頭が良かったものの、出産後はまるで子どものように奔放に。彼女には70歳を過ぎてなおナイスバディの母親・オババと、2人の子ども、ミツバとノビルがいる。満々子は中学校で給食作りのアルバイトをするものの、上半身裸になってゴリラの真似をしたりと逸脱しがち…。そんな彼女の日常を、軽妙な一人称で描く。涙と笑いの家族の物語。


【インタビュー】

物語の冒頭、主人公の満々子は突然、キャベツ畑でおしっこをする。春になると笑って鼻歌を歌いだし、くるりんぱ、と回ってみたりする。そんな満々子は47歳。一男一女の母だ。夫はおらず、子どもたちはとっくに自立している。満々子は「傍から見たらタガが外れた変な人。だけど話してみれば深いところを分かっている人」と大道珠貴さん。能天気で奔放で、子どもたちのほうがむしろ大人っぽい、満々子のユーモラスな日常を一人称で書き綴る。

「福岡に住んでいた子どもの頃、満々子のような不思議なおばさんが近所にいたんです。本気で子どもと喧嘩する人でした。確か私もふっかけられた覚えが(笑)」。そんな幼少期の記憶をもとに描き出したかったこととは―。

「天真爛漫な満々子の口を借りて、常識に束縛されず、自由に生きる逃げ道がある、ホンワカした小説を書きたいと思ったんです」
(インタビューの続きは本誌で…)

●大道珠貴さん
66年、福岡市生まれ。2000年に「裸」で九州芸術祭文学賞を受賞、作家デビュー。03年、『しょっぱいドライブ』(文藝春秋)で芥川賞を受賞。05年、『傷口にはウォッカ』(講談社)でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。その他著書多数。「35歳くらいからお酒を飲み始めて、実はアルコールに強いことを知ったんです。日本酒はまるで甘いお水みたい」という酒豪でもあり、06年9月にはエッセイ集『東京居酒屋探訪』(講談社)も上梓。

  【 音楽 】
 

【 TERMINAL 】
●シンガー:Salyuさん

『Tower』『プラットホーム』(映画『地下鉄(メトロ)に乗って』主題歌)、『name』といったシングルを含む2ndアルバム。音楽プロデューサーの小林武史さんが手がけるイマジネーション豊かなメロディ、強いエネルギーと質の高い洗練を両立させたバンドサウンドが、Salyuさんのシンガーとしての個性を鮮やかに引き立てている。一青窈さんによる情感あふれる歌詞も魅力。1月17日発売、3059円(トイズファクトリー)。


【インタビュー】

作詞に、Mr.Childrenの櫻井和寿さん、作曲に音楽プロデューサー小林武史さんを迎えたバラード『to U』における美しく、エモーショナルな歌声によって、シンガーとしての高い資質を改めて示したSalyuさんから、2ndアルバム『TERMINAL』が届けられた。

1stアルバム『landmark』以降、「ツアーやサマーフェスティバルを経験することによって、音楽の伝わり方をより深く考えるようになった」というが本作で目指したのは、「最高にポップなアルバムにしたい」ということ。

「どう歌えばポップになるか、ということをいつも考えていました。歌が持っているエネルギー、スピード感を楽しんでもらいつつ、グッと集中して聴いても深みのあるものにしたい、というか。ニュアンス、表現にはさらに細心の注意を払ったつもりです」
(インタビューの続きは本誌で…)

●Salyuさん
2000年4月、Lily Chou-Chouとして2枚のシングルをリリース。01年10月には映画『リリイ・シュシュのすべて』(岩井俊二監督)のアルバム『呼吸』を発表。04年、ILMARI(RIP SLYME)とのコラボレーション曲『VALON』を経て、シングル『VALON-1』でデビュー。

  【 舞台 】
 

【 橋を渡ったら泣け 】
●俳優:大倉孝二さん

未曽有の大災害に襲われた日本。信州・乗鞍岳では、生き残った人々が集団生活を送っていた。閉鎖された状況下におかれた人間の心理をコミカルかつリアルに描き出す群像劇。3月5日〜29日、Bunkamuraシアターコクーン。作/土田英生、演出/生瀬勝久。出演/大倉孝二、奥菜恵、八嶋智人、戸田恵子ほか。
電話03-3477-3244(Bunkamura)。


【インタビュー】

奇想天外なナンセンス・コメディを得意とする劇団『ナイロン100℃』で役者としてのスタートを切り、瞬く間に映画やテレビ、CMからアニメの声優まで活動を広げてきた大倉孝二さん。187センチのひょろりとした長身から醸し出される独特の雰囲気と語り口調は、多くの演出家や監督から愛されている。

今回出演を決めた『橋を渡ったら泣け』も、6年ぶりに舞台の演出を手掛ける生瀬勝久さんから直接オファーを受けた。「稽古の休憩中に、携帯電話に連絡があったんです。いつもは麻雀の誘いなのに、やけに優しい口調なので『怪しい』と思ったら、この作品の話でした。演技に厳しくて怖い舞台の大先輩なので、その場で即諾せざるを得ませんでした(笑)」(インタビューの続きは本誌で…)

●大倉孝二さん
74年東京都生まれ。舞台芸術学院卒業後、95年、ケラリーノ・サンドロヴィッチ率いる劇団『ナイロン100℃』に入団。同劇団の作品に加え、野田秀樹、三谷幸喜氏、G2などの外部作品にも出演。映画、ドラマ、バラエティ番組、テレビCMにと活動範囲を広げている。