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      ◇◇ 2007年 12月のカルチャー情報 ◇◇

  【本】 秋の牢獄
  【本】 私の男
  【音楽】 クリスタル・ケイの『Shining』
 

【舞台】 劇団、本谷有希子 第13回公演『偏路』

  【 本 】
 

【 秋の牢獄 】
●角川書店/1470円

朝目覚めると、今日もまた11月7日水曜日。女子大生の藍は何度もその日を繰り返している。この秋の一日にいつか終わりが来るのだろうか――。表題作『秋の牢獄』ほか、『神家没落』『幻は夜に成長する』の2編を収録したホラー短編集。「書き始めはいつもぐちゃぐちゃなので、けっこう不安なんですけど、とにかくいじりまくっていくうちに話が見えてくると非常に楽しいです。今回は秋の気配に満ちた綺麗なホラーができました」


【インタビュー】

2年前、デビュー作『夜市』でいきなり直木賞候補に、続く2作目では山本周五郎賞候補に挙げられ、注目される恒川光太郎さん。3作目となる『秋の牢獄』は3つのホラー作品を収録した短編集だ。

「SFっぽいものが書きたくて、リプレイものに挑戦した」という表題作『秋の牢獄』は、繰り返し訪れる11月7日を生きる女子大生の話。『神家没落』は散歩の途中でふと立ち寄った民家から出られなくなる男の話で、怖さの中にもほのぼのとした味わいがある。『幻は夜に成長する』は幻術を操る祖母に育てられ、自らも不思議な力を持つ女性の数奇な人生をグロテスクなまでに生々しく描いた。深遠で壮大な異次元の世界は、狂おしく美しく果てしなく、短編とは思えない読み応えだ。

「凝縮は僕の得意技なんで(笑)。でも何遍も何遍も一から書き直すので、ひとつのお話を仕上げるのにすごく時間がかかってしまいます。出来上がったものは、主人公の年齢や性別、ストーリー展開まで、最初に書いたものとは似てもにつかないものになるのが常です」
(インタビューの続きは本誌で…)

●恒川光太郎さん
73年東京都生まれ。大東文化大学を卒業後、様々な職種を経て、05年「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。同作で直木賞候補になる。06年初の長編「雷の季節の終わりに」が山本周五郎賞候補に。7年前より沖縄に移住。海まで30分のところに住み、天気のいい日は朝からひと泳ぎ。海に飽きたらハンモックを吊って読書。昼過ぎに帰宅して、午後からは執筆活動、という優雅な暮らしぶり。「書き始めるまでが嫌で逃げてるだけなんですよ(笑)」

  【 本 】
 

【 私の男 】
●文藝春秋/1550円

9歳のときに災害で家族を亡くし、遠縁にあたる青年・腐野淳悟に育てられた花。24歳になった花は淳悟と離れられるのだろうかと不安を抱きながら、派遣先の会社で出会った美郎と結婚する。ところが新婚旅行から帰ってみると、淳悟は姿を消していた――。父と娘であり、男と女であり、共犯者でもあった二人の15年とは? 血のつながった異性の究極の関係を現在から過去へさかのぼり、斬新な視点と美しい文章で描いた傑作!


【インタビュー】

桜庭一樹さんの最高傑作が誕生したと、早くも話題になっている『私の男』。ご本人も「面白い小説になったという手応えは感じたし、こんな小説も書けるんだなと自分でも驚きました。『赤朽葉家の伝説』が初期の代表作だとしたら、『私の男』は次の期の始まりに位置づけられる作品になったんじゃないでしょうか」と言う自信作だ。

主人公は幼い頃に震災孤児になり、遠縁にあたる淳悟に引き取られた腐野花。この設定は、子ども版の世界文学全集で読んだ、みなしごの女の子が青年に育てられる物語を意識したという。

「私は青年と少女の魂は似ていると思っていて。その要素を父と娘の関係に結びつけました。誰もが血縁の異性に抱く、家族愛以外の独特な感情を描きたくて」。青年と少女で、父と娘。その上、過去に犯した罪から逃げている花と淳悟の間には、ただならぬ雰囲気が漂う。近親相姦があったことも早々に匂わされる。
(インタビューの続きは本誌で…)

●桜庭一樹さん
99年『AD2015隔離都市 ロンリネス・ガーディアン』でデビュー。07年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞を受賞。『私の男』執筆中、作中に印象深く登場する流氷を見に、紋別へ。空港から車でしばらく走ると、巨大オブジェが現れたそう。「びっくりして“あれは何ですか?”と聞いたら、地元出身の担当さんは“え? カニの爪ですけど”って(笑)。イメージに合わないので作中には出しませんでしたが、面白かったです」

  【 音楽 】
 

【 Shining 】
●シンガー:クリスタル・ケイさん

ウインターシーズンを彩る5曲を収録したミニアルバム。ワクワクするような高揚感をたたえたアッパーチューン『Shining』、温かいエモーショナルに満ちたバラード『Snowflake』のほか、05年に配信のみでリリースされたクリスマスソング『Happy 045 Xmas』、ナタリー・コールの『No more blue Christmas』のカバーも。発売中 1529円(エピックレコードジャパン)


【インタビュー】

07年6月にリリースされた7thアルバム『ALL YOURS』が初のチャート1位を獲得。13歳のデビューから8年、シンガーとしての存在感をしっかりと確立したクリスタル・ケイさんが、冬をイメージさせる楽曲を集めたミニアルバム『Shining』をリリース。

「アルバムの後は、(リリースの間隔が)開いてしまうことが多かったんですけれど、今年は“もう一枚、出したいね”という話になって。冬をテーマにした作品を作るのも初めてだし、すごく新鮮でしたね」

表題曲『Shining』はハウスミュージックのビートが印象的なダンスチューン。このアレンジは彼女自身のアイデアがもとになっているとか。「デモの段階ではボサノバのテイストが強かったんですけど、ハウスっぽい感じにすれば、冬のキラキラ感が表現できるんじゃないかなって。思わず踊りたくなっちゃうような、インパクトのある曲になったと思います」
(インタビューの続きは本誌で…)

●クリスタル・ケイさん
86年神奈川県生まれ。99年、シングル『Eternal Memories』でデビュー。ブラックミュージックのテイストをたっぷり感じさせるボーカルによって、高い評価を得る。05年にはシングル『恋におちたら』が大ヒット。07年にはシングル『きっと永遠に』『こんなに近くで…』『あなたのそばで』に続き、アルバム『ALL YOURS』を発表

  【 舞台 】
 

【 劇団、本谷有希子 第13回公演『偏路』 】
●演出家:本谷有希子さん

女優を夢見て上京したけれど、所属していた劇団が解散し、やむを得ず田舎に帰ってきた主人公。しかし、そこには上京よりも大変な田舎の現実が待ち受けていた。12月14日〜23日まで東京・紀伊國屋ホールで上演。脚本・演出/本谷有希子 出演/近藤芳正、馬渕英俚可、池谷のぶえ、加藤啓、江口のりこ、吉本菜穂子 問い合わせ 03-5361-3027(ヴィレッヂ) http://www.motoyayukiko.com


【インタビュー】

本谷有希子さんの舞台には、いつも胸をザワつかせるものがある。作家自身、「題材として、性格の悪い人のほうが面白い」と言うように、作品に登場するのは、どこか歪んだキャラクターたち。そして、その過剰な自意識から愛憎入り乱れる人間模様が展開される。観客はそんな彼らを通じ、心の奥底に隠していた自身の自意識と向き合うことになる。そんな本谷さんが描く新作『偏路』は、なんと意外にも“ホームドラマ”なのだという。

「自分でもまさかホームドラマを書くとは思ってもいませんでした。ホームドラマといえば、どこかハートフルで心温まるイメージで、これまで自分が最も避けていたジャンル。今回はあえてそこに挑もうかなと」

本谷さんが描こうとしているのは、過剰なまでの善意の姿。「これまで、善意の裏にある悪意を表面化させることで、人間を立体的に書いたつもりになっていたんです。逆に善良な人を、薄っぺらなつまらない人と見なしてた。でもふと、善良な人の悪意を疑ってしまったりするほうが、実は薄っぺらい人間なのかもしれないとも思ったんですよね。それで、善意だけで立体的に人間を書くことはできないかと考えたのが今回の作品なんです」(インタビューの続きは本誌で…)
(インタビューの続きは本誌で…)

●本谷有希子さん
79年石川県生まれ。高校卒業後上京し、大人計画『ふくすけ』など女優として活躍。00年、専属の俳優を持たないプロデュースユニットの形で活動する「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、自ら脚本、演出を手がけ始める。また、小説家としても活動しており、『生きてるだけで、愛。』(新潮社)では芥川賞候補にもなった