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      ◇◇ 2008年 1月のカルチャー情報 ◇◇

  【本】 雨の塔
  【本】 カツラ美容室別室
  【音楽】 朧の彼方、灯りの気配
 

【舞台】 新橋演舞場 初春花形歌舞伎『雷神不動北山櫻』

  【 本 】
 

【 雨の塔 】
●集英社/1260円

資産家の娘が集う全寮制の学校に、ある年、4人の少女が入学する。心中に失敗した矢咲、デザイナーの母に捨てられた小津、財閥トップの娘で政略結婚に「使われる」予定の三島、三島のそばにいなければならない都岡。おいしいお菓子もきれいな洋服も手に入るが、外部の情報から隔離された、閉ざされた空間でいつしか芽生える愛情、関心、嫉妬、執着…。ところが一通の手紙が4人の運命を変える。大人のための少女小説


【インタビュー】

江戸の遊女たちの純愛と官能の世界を綴ったデビュー作『花宵道中』が絶賛され、一躍、人気作家になった宮木あや子さん。幼い頃から文章が得意だったが、本気でプロを目指すようになったのはIT企業でSEとして働いてから。「会社を辞めたいという気持ちがピークに達して(笑)。真剣に新人賞に応募するようになってから2年と少しでデビューできたので、もっと早く頑張ればよかったなと思いました」

待望の第2作『雨の塔』は、海辺に立つ全寮制の女子大が舞台だ。ラプンツェルの塔と呼ばれる寮、お菓子の家のような色とりどりの建物が並ぶダウンタウン。現代の日本でありながら、外部の情報と隔絶された世界が印象に残る。「昔から女子校寄宿舎モノが好きなんですよ。美人、いじめられっ子、おてんばなど、いろんな子がいて人生の縮図みたいになっている。汚いものも書かなくていい。ただ、女子校でも高校を舞台にした作品は過去にたくさんありますし、私は大学にしてみました」
(インタビューの続きは本誌で…)

●宮木あや子さん
76年神奈川県生まれ。06年江戸・吉原を舞台にした「花宵道中」で第5回「女による女のためのR-18文学賞」大賞と読者賞を同時受賞。著書に受賞作を収録した『花宵道中』がある。作品からは美意識の高さがうかがえるが「美しいものばかり書いていると膿(うみ)みたいなものがたまるんですよ。だから『小説宝石』では『尻の穴に座薬』というシリーズを書いているんです(笑)。時々美しさを意識しなくてもいいものも書いて、自分の中でバランスをとっています」

  【 本 】
 

【 カツラ美容室別室 】
●河出書房新社/1260円

27歳のサラリーマン佐藤淳之介は、風来坊だけどなぜか気が合う5歳年上の男・梅田さんの住む高円寺に引っ越した。梅田さんに呼び出されて行った「カツラ美容室別室」で、カツラをかぶった店長の桂(カツラ)さんや、24歳の美容師・桃井さん、身長170センチ強、尊大に見える27歳の美容師・樺山エリコと知り合うが…。恋愛とも友情とも言い切れない微妙な感情の揺れ動きと、働く人々の心の機微をとらえ、大人の男女の関係を描く


【インタビュー】

登場人物の何げない日常や、微細な感情を描くことで、時代のど真ん中からは少し距離を置いた生活に光を当てる山崎ナオコーラさんの新刊。主人公の「オレ」は、引っ越したばかりの町で知り合った美容師「エリ」に少しずつ惹かれる。ただし、この物語にはビビットな恋の駆け引きや、激しい感情のぶつかり合いは登場しない。触れては離れるような淡い感情の小波が、なんとなく始まり、そして過ぎていく―。

「恋という言葉はある意味とても暴力的。どんな感情でも“これは恋”と言えば言えてしまうけど、恋愛と友情の差って、実はあまりないような気がするんです。女友達とだって、時にはベタベタしたり、勝手に依存したり、期待したりしますよね。それは限りなく恋愛に近い。そんな曖昧な感情を小説にしたかった」

ドラマティックな展開はなくとも、この小説は決して平凡ではない。「桜の花はすごい。幻想の塊のようにボンボンと木に群がっている。オレはくらくらする」と、歌うように滑かな文章に、ぐいぐいと引き込まれていく。「一文一文を洗練させることには、すごくこだわっていますね。小説を書く前も映像的なシーンではなく、まず“書きたい文章”があるんです」
(インタビューの続きは本誌で…)

●山崎ナオコーラさん
78年福岡県生まれ。会社員として働きながら04年『人のセックスを笑うな』で、第41回文藝賞を受賞しデビュー。ロングセラーとなった同作品は映画化され、1月19日より、シネセゾン渋谷ほかにて全国ロードショーが決定。ほかの著書に『浮世でランチ』、エッセイ集『指先からソーダ』がある。「髪型はすぐ変えたくなるけど、髪型の説明が苦手なので、美容院は苦手。先日も前髪を切り過ぎました(笑)」

  【 音楽 】
 

【 朧の彼方、灯りの気配 】
●ミュージシャン:坂本美雨さん

クラムボンのミト、Polarisのオオヤユウスケといったクリエイターが参加した7曲入りアルバム。スティールギターの穏やかな音色が響く『いくつかのこと』、益子樹(鍵盤)、勝井祐二(バイオリン)とのセッションによる『おぼろの彼方』などの美しい響きを持つ楽曲のなかで、彼女の生々しい声が広がっている。発売中 2000円(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)


【インタビュー】

“Ryuichi Sakamoto featuring Sister M”でのデビューから10年。舞台、翻訳、エッセイと活動の幅を広げている坂本美雨さん。ニューアルバム『朧の彼方、灯りの気配』は、彼女の魅力である、美しい陰影をたたえた声をたっぷりと堪能できる作品となった。「私が今“なぜ歌ってるんだろう?”というと、“この声にはきっと、何か使い道があるんじゃないか”って思うからなんですよね」という坂本さん。「音の響き、空間の響きに対して、すごく繊細な人」というサウンドプロデューサー益子樹氏との出会いも、坂本さんにとって大きな刺激となったようだ。

「益子さんのスタジオは自由な空間で、歌の録り方にしてもハーモニーにしても、いろんなアイデアを試すことができたんです。今まではただ“歌うのが楽しい”という感じでしたが、もっと自分の声と向き合うようになったし、“訓練を積めば、もっと進化できるんじゃないかな”とも思いましたね」
(インタビューの続きは本誌で…)

●坂本美雨さん
80年生まれ。9歳のとき、家族でニューヨークに移住。97年、“Ryuichi Sakamoto featuring Sister M”名義でデビュー。99年、坂本美雨として音楽活動を開始、1stフルアルバム『DAWN PINK』を発表。06年、竹中直人の舞台『そう。』に出演。音楽活動に加え、ジュエリー・ブランド「aquadrops」のプロデュースなど、幅広く活動中

  【 舞台 】
 

【 新橋演舞場 初春花形歌舞伎『雷神不動北山櫻』 】
●歌舞伎俳優:市川海老蔵さん

市川家のお家芸「歌舞伎十八番」の演目として名高い『鳴神』『毛抜』『不動』の演目は一つのまとまった物語。初演は1742年で、今回は現代に合った構想と脚本で上演される。海老蔵は粂寺弾正、鳴神上人、早雲王子、安倍清行、不動明王の五役。共演には中村芝雀ほか、市川猿之助一門の役者が顔を揃える。1月27日まで新橋演舞場で上演。問い合わせ 03-5565-6000
(チケットホン松竹)


【インタビュー】

歌舞伎の将来を背負って立つ若手スターといえばこの人、11代目市川海老蔵。08年1月、『雷神不動北山櫻』という演目を通して全編上演する。

江戸歌舞伎の宗家である市川家のお家芸を18種類集めたのが「歌舞伎十八番」。これに含まれる『鳴神』『毛抜』『不動』という演目は通常は単独で上演されるが、もとはといえばそれぞれがこの『雷神不動』という一つの長い作品の一幕だった。今回海老蔵さんは改めて一つのストーリーに再構成するという。

「歌舞伎の場合、長い物語の中で評判のいい一部だけを上演することが多いんですが、これは初めてご覧になる方にはかなり不親切ですよね。お客様のほとんどが物語の背景をご存知だった時代ならそれでいい。でも僕は若い世代のお客さんを歌舞伎に引っ張りたい。だからまず物語の全体像を説明し、分かりやすくしなくちゃいけないと考えているんです」
(インタビューの続きは本誌で…)

●市川海老蔵さん
77年に12代目市川團十郎の長男として誕生。85年歌舞伎座で7代目市川新之助を名乗り初舞台。04年歌舞伎座で11代目市川海老蔵を襲名。NHK大河ドラマ『武蔵MUSASHI』、映画『出口のない海』などにも主演し活躍。07年にはパリ・オペラ座公演や現代劇『ドラクル』にも出演するなど幅広く活動する